『秀雅百人一首』

緑亭川柳 輯 ほか 著 弘化5年 山口屋藤兵衞ほか12名出版 

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圓珠は田原藤太秀郷の後胤上

州沼田の城主五郎家政の娘也

女ながらも文武に心懸ふかく家に

つかふものにあはれみをかけ人の過を

みだりに問ず人の善を聞ては我よき

ことのごとく思ひて悦び人の悪を聞ては

わが心悪にかたぶかんことをつヽしみ

道理にさとく和歌もよくよめり

衣によする梅の題にて

「いとよはき梅の匂ひの花ごろも

  春よりさきにほころびにけり

立田山の歌は世に聞へてかたじけなく

も叡聞に達し後伏見院御感有て

「上野やぬま田のさとにまどかなる

  たまの有とはたれかしらまし

かく御製を給はりしこといと有がたし

また恨みる恋の題にて

「ほど過て今はかれ野の思ひぐさ

  おのれとのみももゆるころかな

圓珠

立田山もみぢをわけて入る月は錦につヽむ鏡とぞ見る